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愛知県埋蔵文化財センター  - 公益財団法人愛知県教育・スポーツ振興財団

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11/28/2014

豊橋市・キジ山古墳群を歩く(2)

Filed under: - palace @ 11:31 am

◎調査課の永井邦仁です。

今回は、キジ山古墳群の発掘調査で最も注目された小型の横穴式石室【KJ10A区001SZ】の調査経過をみてみましょう。


▲[画像01] 古墳の表土を重機で掘削しているところ(え?!どこ?)

調査区は、雑木林の緩斜面だったところで、伐採を終えて重機で表土掘削を開始しました。地山まで約20cmと見積もって、順調な滑り出しでした。ところが、どういうわけか石によく当たる。何かの遺構かと考え、手作業での掘削に切り替えました。


▲[画像02] 横穴式石室【10A区001SZ】の検出状況

すると石の集まりは、最初は列状にそして最後は馬蹄形に並んで検出され、天井石の失われた横穴式石室の側壁部分だったことが判明しました。すぐ横の調査区壁面をみても、古墳のマウンドらしき高まりは全くみられず、完全に埋没していたことがわかります。


▲[画像03] 001SZの石室洗浄作業

その後、石室の調査を開始しましたが、埋土や床面の石敷からは全く遺物が出土せず、遺骸も残っていませんでした。しかし、石室前方の木根周辺の土中から須恵器杯の小片が出土し、付近に顕著な遺構がないことから、石室にかかわるものと判断しました。この須恵器は7世紀末〜8世紀前半のものと考えられます。


▲[画像04] 石室前方からみた001SZ(とても狭いです)

こうして石室の構造を明らかにできましたが、長さが約1.7mしかないうえに幅や高さも小さいのが特徴です。あまりに狭いので、このように側壁までできあがった時点で遺骸を納め、しかるのちに天井石を架構したものと考えられます。


11/26/2014

栗狭間遺跡(豊田市)の調査速報

Filed under: - palace @ 4:13 pm

◎調査課の鈴木恵介です。

栗狭間遺跡の発掘調査は、最終のB 区での調査が本格化しました。B 区は南東向きの幅広斜面で構成され、立地が良好です。以前から遺構・遺物の出土が期待されていますが、早くもその片鱗が見えはじめました。この写真は午前中に撮影したものですが、日当りも良好です。

▽成果報告会を開催しました。
 去る10 月25 日( 土) に下山交流館において2014 年度上半期の発掘調査成果報告会に参加させていただきました。
 調査成果の報告では約50 名の方が参加くださり、遺物展示コーナーでは間近で遺物をご覧いただきました。
 下半期の成果報告会も実施する予定です。ぜひお越し下さい。

▽掘立柱建物跡(ほったてばしらたてものあと)
 穴を掘って, その中に柱を立てる構造の建物跡です。穴がいくつも見えています。現在のような床を持った建物の可能性があります。大きさは、長さ約6m、幅約4m を想定しています。まだ調査中ですので、詳しい結果は後日の報告にて。

▽石匙(いしさじ)- チャート製-
 石を見事に加工し、突起の部分も造り出されています。栗狭間遺跡のA 区でも、すでに似た形状の石匙が出土しています。縄文時代のものと思われます。

▽ C 区の調査
C 区の調査は補足調査を除き、終了しました。南北に延びる尾根の先端部に広がる堆積層から縄文時代の土器・石器等が見つかっています。


11/18/2014

豊橋市・キジ山古墳群を歩く(1)

Filed under: - palace @ 10:19 am

◎調査課の永井邦仁です。

今月末の29(土)・30(日)は、名古屋市博物館で開催される『考古学セミナー あいちの考古学2014』です。30日には、後期古墳をテーマにしたセッションが予定されていますが、そのひとつに豊橋市・キジ山古墳群が挙っています。
 そこで昨年度末に刊行された調査報告書(http://www.maibun.com/DownDate/PDFdate/18800.pdf)から、少しずつ紹介していきたいと思います。

 キジ山古墳群は、豊橋市の市街地東方の丘陵上に立地する古墳時代後期の古墳群です。豊橋市の水道タンクのある丘(頂上は標高130m)といえばすぐおわかりでしょう。そこには40基以上の古墳があるのですが、平成22年度に埋文センターが3基の横穴式石室を発掘調査しました。

 一番注目されたのが、一番小さな石室です【KJ10A区001SZ】。南東側斜面の低い地点(標高38m)です。全長が人の背丈くらいしかない(約1.7m)ものですが、奥壁があって胴張り形をしているので、立派な横穴式石室なのです。残念ながら副葬品の出土はなかったのですが、付近からは8世紀前半とみられる須恵器杯片が出土しているので、おそらく7世紀末から8世紀前半につくられたものと考えられます。なお、このタイプの古墳はあまりに小さいので墳丘もほとんどなく、地表面でみつかりにくいという問題があります。

 尾根の高いところで検出されたのが南へ開口する横穴式石室です【KJ10C区018SZ】。石室内は撹乱を受けており出土品が少なかったのですが、径の小さな耳環2点や須恵器蓋片が出土しています。7世紀初め頃につくられたと考えられます。

 最後に紹介するのが、西側斜面の標高57m地点で検出された、西へ開口する石室です【SU10A区082SZ】。石室の平面形が胴張りのない長方形なのと、石室内から出土した須恵器や土師器の時期から、6世紀後葉につくられたものと推定されます。おそらくキジ山古墳群の中でも最古段階に位置するでしょう。
 このように、さまざまな時期の古墳を調査したことで、墓域の変遷がみえてきました。つまり、西側斜面で始まったものが7世紀代には尾根上の高いところにおよんで、やがて南東斜面の低いところへ広がっていく、というものです。この変遷についてはセッションで詳しく述べたいと思います。


11/12/2014

蔵平遺跡(豊田市)の調査速報

Filed under: - palace @ 1:09 pm

◎調査課の町田です。


▲蔵平遺跡全景(上が北東 右:14A 区 左:14B 区)

 蔵平遺跡は9月の初めに、14B 区(西側斜面)のラジコンヘリコプターからの全景撮影及び14A・B 区の測量等が終わり、無事に調査が完了いたしました。
 調査では古代の10 基の竪穴状遺構- たてあなじょういこう-、10 カ所以上の炉跡・カマド、土坑、柱穴等、150 余りの遺構が確認され、灰釉- かいゆう- 陶器碗、土師質甕- はじしつかめ-、土錘- どすい- 等の遺物が多数出土しています。
 蔵平月報の最終回として、出土した遺物の中から、墨で文字が書かれた灰釉陶器と土錘を取り上げたいと思います。


▲蔵平遺跡14B 区全景(南東上空から)

YOU(有)は何しに?
 蔵平遺跡では「有」、「本」、「大」と読める文字が墨で書かれた碗が出土しています。他にも文字がはっきりしてなくて、読めそうで読めない文字のものもあります。
 現代でこそ、識字率- しきじりつ、字が読める人の割合- は100%近くありますが、平安時代は10%にも満たなくて、10 人に1 人も字が読める人はいなかったようです。つまり、文字が書ける人は限られた人・・・役人、僧侶とか地方の有力者?だったかもしれません。これらの器を使っていた人はどういう目的で来ていたのでしょうか?何かを採りに、あるいは何かを作りに・・・

▲底に墨書きが施された灰釉- かいゆう- 陶器碗(上から「有」「本」「大」)

なぜか?土錘- どすい- ?
 蔵平遺跡では魚の漁に使われる投網- とあみ- や刺し網- さしあみ- の錘- おもり- として使われる低温で素焼きされた土製品、土錘が18 点出土しています。
 面白いことに、その殆どは水辺に近い標高の低い場所からではなく、斜面の比較的高い位置から見つかっています。漁の最中に落としたものでも、上流から流れてきたものでもない・・・魚を獲った後に、網の修理やお手入れ・・・傾斜地での日常的な営みの一部だったのでしょうか?

▲左:蔵平遺跡から出土した土錘  右:土錘と漁網(イメージ画像)


11/4/2014

考古学セミナー「あいちの考古学2014」

Filed under: - palace @ 5:30 pm

< <主 催>>
 名古屋市博物館
 名古屋市見晴台考古資料館
 愛知県埋蔵文化財センター

< <日 程>>
2014年11月29日(土) 13時から17時
2014年11月30日(日) 10時から15時
 *事前申し込み不要・参加無料

< <会 場>>
名古屋市博物館  地下講堂 展示解説室
ホームページ:http://www.museum.city.nagoya.jp
〒467-0806 名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1
電話 052-853-2655
Fax 052-853-3636
*できるだけ公共交通機関をご利用ください。

< <問い合わせ等>>
(公財)愛知県教育・スポーツ振興財団
 愛知県埋蔵文化財センター 調査課
 〒498-0017
 愛知県弥富市前ヶ須町野方802-24
 電話 0567-67-4163
 URL http://www.maibun.com/top
 E-mail doki@maibun.com

< <日程>>
11月29日(土) 午後1時から午後4時
 ●研究報告
13:10〜13:25 「萩平遺跡A地点の様相」鈴木翔太(愛知学院大学)
13:25〜13:40 「愛知県西部の縄文〜弥生時代移行期古人骨の身長推移」村松裕南(名古屋大学)
13:40〜13:55 「3世紀前後の伊賀地域の交流と役割−受口甕とS字甕の分析を通して−」濱村友美(三重大学)
13:55〜14:10 「牟田洞窯跡(第1・2次)の調査成果」森まどか(愛知学院大学)
14:30〜14:45 「学校教育とNPO〜犬山市立栗栖小学校での歴史教育プログラムの取組みについて〜」大塚友恵(NPO法人古代邇波の里・文化遺産ネットワーク)
14:45〜15:00 「吉胡貝塚資料館の縄文体験」清水俊輝(田原市教育委員会)
15:00〜15:15 「犬山焼普及に向けての取り組みについて」青木 修(公益財団法人瀬戸市文化振興財団)・岩田紗絵(財団法人岩田洗心館)・奥野絵美・大塚友恵・中野耕司(NPO法人古代邇波の里・文化遺産ネットワーク)
 ●セッション1
15:30〜16:30 「埋蔵文化財と市民をつなぐこころみ」
          参加者:村木 誠(名古屋市博物館)・長崎千明(名古屋市見晴台考古資料館)・北條献示(稲沢市教育委員会)・小澤一弘(愛知県埋蔵文化財センター)

11月30日(日) 午前10時から午後3時
 ●研究報告
10:10〜10:25 「三次元レーザー計測で魅たシリア・パルミラ遺跡」白樫 淳(株式会社アコード)
10:25〜10:40 「別郷廃寺の発掘調査成果」石原奈緒子(安城市教育委員会)
10:40〜10:55 「豊田市・岡崎市下山地区の発掘調査成果について」鐸木厚太(愛知県埋蔵文化財調査センター)
 ●基調報告
11:10〜11:25 「岡崎市車塚遺跡」池本正明(愛知県埋蔵文化財センター)
11:25〜11:40 「豊橋市・キジ山古墳群」永井邦仁(愛知県埋蔵文化財センター)
11:40〜11:55 「名古屋市守山区志段味古墳群の群集墳」深谷 淳(名古屋市教育委員会)
11:55〜12:10 「浄土寺古墳群(福井県三方郡美浜町所在)」松葉竜司(福井県美浜町教育委員会)
 ●●基調講演●●
13:30〜14:15  「後期古墳からみた地域社会」菱田哲郎(京都府立大学)
 ●セッション2
14:30〜15:45  「後期古墳からみた地域社会」
参加者:菱田哲郎・深谷 淳
    関連報告「船来山古墳群について」 恩田知美(岐阜県本巣市教育委員会)

 ●ポスターセッション(11月29日・30日 展示解説室にて展示)
「名古屋大学構内 東山72号窯の発掘調査」 梶原義実・岡田紘和・片桐妃奈子・深谷岬・西本茉由(名古屋大学)
「博物館における学習プログラム〜ワークショップができるまで〜」 坂下凌哉・瀧はる香・亀山沙希(南山大学博物館実習生)
「民族資料を考古資料としてみるーパラオの伝統的カヌーを事例にしてー」 如法寺慶大・中尾世治(南山大学)
「史跡 伊勢国府跡」 吉田真由美(鈴鹿市考古博物館)
「安城市本證寺境内地」 西島庸介(安城市教育委員会)
「猿投窯最古の窯・東山111号窯跡の再検討について」   大西 遼(愛知県陶磁美術館)
「豊田市・岡崎市下山地区の発掘調査成果について2014」 三輪みなみ(愛知県埋蔵文化財調査センター)
「全天球パノラマ映像コンテンツ」 坂本範基(ナカシャクリエイテブ株式会社)
「土器圧痕レプリカ法の実演」 小林克也(株式会社パレオ・ラボ)
「3次元計測とその活用について」 内田恭司(国際文化財株式会社)・横山薫(株式会社三重計測サービス)
「東海市畑間・東畑・郷中遺跡発掘調査について―平成11〜19年度調査を中心として―」永井伸明(東海市教育委員会)
「朝日遺跡 写真展」 中谷正和・中野耕司(NPO法人古代邇波の里・文化遺産ネットワーク)
「吉胡貝塚資料館の縄文体験」 清水俊輝 
「犬山焼普及に向けての取り組みについて」青木 修・岩田紗絵・奥野絵美・大塚友恵・中野耕司
「三次元レーザー計測で魅たシリア・パルミラ遺跡」白樫 淳


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