調査課の永井邦仁です。
遺跡散策をするにはちょうどよい季節となりました。私が担当する、鹿乗川流域にある安城市惣作遺跡でも発掘調査が開始されましたが、調査をしていない時に遺跡を訪ねようとしても、田畑ばかりでその場所がわかりにくい、というお話をよく聞きます。
そんな時に目標にしていただきたいのが、鹿乗川にかかる橋です。というのも、これまで当センターが発掘調査してきた鹿乗川流域の遺跡は、いずれも橋のある地点を中心に広がっているからなのです。
それでは鹿乗川の橋を訪ねながら、そこにある遺跡に出会う散策に出かけましょう。惣作遺跡から北へさかのぼっていくことにします。
▲寺領橋(仮設橋)と惣作遺跡(平成21年度調査時)
安城市木戸町にある寺領橋は、現在工事中で間もなく新しい橋が完成するようです。自動車が行き交うこの橋は、まさに惣作遺跡の中心部分にあたります。惣作遺跡では、数次の発掘調査によって弥生時代中期や奈良・平安時代の集落が検出されています。
▲岩根橋(現在は通行できません)
寺領橋の北側に岩根橋という1933年(昭和8)に造られた古くて小さな橋がありますが、そのあたりで川の跡が発掘され、奈良時代の木簡が出土しています。木簡には「呉部足国」という人名も記されていました。寺領橋から南西方向の寺領町内には、寺領廃寺という古代寺院跡があり、そことの関連も注目されます。
▲惣作遺跡08A区と今年度調査予定地(★印)(平成20年度調査時)
また、寺領橋の東側あたりが沖積地の高まりになっていたと考えられる場所で、そこを中心とする半径約40mの範囲に弥生時代集落が展開していたとみられます。
次回は岩根上橋から下懸橋を訪ねてみましょう。