塔の越遺跡 調査速報
◎調査課の伊奈です。
稲沢市長野町にある塔の越遺跡の発掘調査を6月から8月末にかけて実施しましたので、その成果を紹介します。
塔の越遺跡の発掘調査は、都市計画道路稲沢西春線にかかる事前調査として平成19年度から本年度まで、3次に渡って実施しました。本遺跡は稲沢市東部、JR稲沢駅近くの市街地にあり、古墳時代から中世までの遺構を検出しました。
▲写真1 調査区遠景
本年度の調査区はA区、B区、C区の3か所。各調査区の概要は以下の通りです。
<A区> 近現代の水田跡の下から奈良時代の掘立柱建物の跡が見つかりました。
<B区> 奈良時代から平安時代の溝4本と、古墳時代後期の井戸が見つかりました。この井戸は素掘りで、井戸の中からは高杯や𤭯(はそう)、杯などの須恵器が出土しました。
▲B区の井戸
<C区> 近世の溝や中世の溝、平安時代の井戸、古墳時代の方墳の溝などが見つかりました。方墳の溝からは完全な形の須恵器(杯身・杯蓋)と共に管玉と呼ばれる当時のアクセサリーも出土しました。平安時代の井戸は大変残りの良い立派なもので、しっかりとした板材を方形に組み合わせて、2段見られ、中からは曲物や櫛、灰釉陶器(瓶・長頸壺)、ピンセット様の銅製品など様々な遺物が見つかりました。井戸の板材は大きな建物の扉が転用されたのではないかと考えられます。稲沢市には古代の尾張国府が置かれていたと考えられており、それとの関連も含めて今後も調査研究を進め、当遺跡の性格を明らかにしていきたいと考えています。
▲C区全景
▲C区方墳の周溝より出土した須恵器(杯身・杯蓋)
▲C区より出土した管玉
▲C区井戸側面
▲C区井戸内部
▲C区井戸出土遺物 1曲物(まげもの)
▲C区井戸出土遺物 2灰釉陶器
▲C区井戸出土遺物 3銅製品