石座神社遺跡 調査速報
◎調査課の早野浩二と日吉康浩です。
愛知県埋蔵文化財センターでは、第二東海自動車道横浜名古屋線にかかる事前調査として、新城市に所在する石座神社遺跡の発掘調査を、平成22年5月から平成23年3月にかけて行いました。調査面積は10,330㎡です。
今年度の調査成果の概要を以下に報告致します。
●遺跡の概要
石座神社遺跡は新城市大宮に所在する、弥生時代後期〜古墳時代前期(西暦2〜3世紀)の集落遺跡です。豊川中流域右岸、連吾川と大宮川に挟まれた標高約110mの上位段丘面上に立地しており、低地との比高は20〜30mです。本遺跡の調査は平成20年度から3年間行っており、今年度が最終年となります。
▲調査区全景
▲北から丘陵全体をのぞむ
●確認された遺構
弥生時代後期〜古墳時代前期の遺構としては、竪穴住居が約220棟、掘立柱建物が約10棟確認されました。
竪穴住居は一辺約5mの方形を呈するものが多く、大半の住居が重複するかたちで確認されています。これは住居の建て替えや拡張等が繰り返された結果と考えられます。なお、丘陵の頂部には大型住居が密集する区域が存在します。今年度確認されたもので最大規模の住居は一辺が約9mです。
掘立柱建物のなかには、布堀り柱掘方をもつものが3棟確認されました。これらは他に比べて規模が大きく、建物の向きも統一されていることから、大型住居と共に、集落における中心施設の一部であった可能性が考えられます。
▲重複する竪穴住居
▲一辺約9mの大型住居(柱を復元)
▲向きを揃えて並ぶ大型掘立柱建物
▲調査風景
●出土した遺物
集落に関係する遺物としては、壷・甕・高杯といった日常生活で用いた土器、土玉・土錘等の土製品、石製紡錘車、鉄斧・鉄ヤリガンナ等の鉄製品、そして破鏡が出土しました。
なかでも注目されるのは破鏡です。これは紀元後1世紀に中国で製作された方格規矩四神鏡の一部で、周囲が丁寧に研磨されています。また紐を通すための孔が2ヶ所に空けられています。
▲ピットから出土した高杯
▲破鏡
●まとめ
今年度の調査では、大型竪穴住居や大型掘立柱建物という集落の中心施設の様相が明らかになり、さらには破鏡の出土といった多くの成果を得ることができました。弥生時代後期〜古墳時代前期にかけて、この石座神社遺跡は東三河における拠点的な集落であり、同一丘陵上に存在する断上山10号墳(前方後方墳、全長50m)に対応する首長居館を擁していたと考えられます。