鹿乗川の橋と遺跡をめぐる(11)
◎調査課の永井邦仁です。
寄島遺跡にかかる加美橋から再開した、鹿乗川の橋めぐりもここで越年になりそうです。先回に引き続き、橋は姫下遺跡にかかる姫下橋です。
姫下橋(昭和36年工事)に立ってみましょう。すぐ南東側に旧河道が検出された地点(姫下遺跡05B区・06C区)があります。その向こうには弥生時代後期から古墳時代前期の集落が広がっていたと想像されます。旧河道は、画像左の白い倉庫の手前あたりを通っていたと考えられます。というのも、その付近でもかつて「木」が出土したとの情報があるからです。
▲画像02 06C区の旧河道での木製品・自然木出土状況(南から)
「木」が出土するのは、植物質が腐りにくい環境にあったからです。この地点の場合、水分がたくさんある旧河道か井戸の可能性が考えられますが、旧河道が流れる方向として問題ないでしょう。
姫下遺跡では、画像のような建築部材が多数出土しました。また、並列する杭も出土しています。水流を調節する施設なのか、船着き場の桟橋なのか、水流のある川ならではの出土状況がみられました(先回の画像に一部出土した状態が写っています)。
▲画像04 旧河道出土の線刻のある土師器甕
ところで姫下遺跡では、焼成前の土器表面に線を刻んで、絵を描いたものが出土しています。なかでも人の顔のように見えるものもを「人面文」と呼んでいます。鋭角的な線で描かれた「人面文」はまるで仮面のようです。
▲画像05 土器集積遺構から出土した「人面文」土器
もう1点は、眼の周囲に入墨を施した「人面文」です。おや、この顔はどこかで見たことありませんか?そうです、姫下遺跡北方の亀塚遺跡出土の「人面文」土器と似ていますよね。定型化された図案があったと考えられるのですが、どれくらいに広がっていたのか関心のもたれるところです。