009:蛇行剣 | |
遺物名:蛇行剣 型式:金属器 概要:古墳時代中期から後期の古墳より出土。蛇行剣は剣身が蛇行するように屈曲する特殊な武器で、古墳時代中期から後期の古墳(墳墓)に副葬される。日本列島では現在、約 70 の古墳(群)や墳墓(群)に副葬された約 100 点が知られ、その半数近くは南九州(宮崎県・鹿児島県)に分布する。愛知県では初めての出土である。長さは 64.5cm で、蛇行剣では長い部類に入る。 ![]() | |
場所 | |
遺跡名:花の木古墳群 所在地:愛知県豊川市大木町地内 調査区:2021 経緯度:北緯34°51′30′′・東経137°24′46′′ |
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研究 | |
概要:
花の木古墳群の蛇行剣は群中の南端に分布する7号墳の埋葬施設に副葬されていた。7号墳は古墳時代前期後半の一辺 11m の方墳が中期前半に一辺 13.5m の方墳に拡張され、拡張後に埋葬施設として2基の木棺を直葬する。蛇行剣が副葬されていたのは拡張後に設置された北側の木棺で、被葬者の足元側と想定される位置に切先を西側に向けて置かれていた。北側の木棺には他に武器類として大刀、鉄剣、鉄鏃、農工具類として鉄斧、鉄鎌、刀子といった豊富な鉄製品群に加えて、装身具として勾玉(翡翠製・瑪瑙製)が副葬されていた。なお、7号墳の東側の墳丘斜面では玉類が 100 点以上出土している(勾玉 14 点、棗玉 11 点、管玉1点、臼玉約 80 点。管玉のみ緑色凝灰岩製、その他は滑石製)。(拡張後の)7号墳、蛇行剣の時期は共伴する副葬品、墳丘斜面出土の玉類から古墳時代中期前半、5世紀前葉と考えられ、東日本では静岡県袋井市五ヶ山 B2 号墳の蛇行鉾と並んで最も古い。
評価: 蛇行剣を副葬する古墳は、同時に鉄製武器、農工具等を豊富に副葬することが多く、花の木古墳群を含む当地域は古墳時代中期前半という比較的早い段階に、特殊な武器を含めた各種鉄製品の流通網に深く関わっていたことが推察される。 特殊な武器である蛇行剣の副葬、また、墳丘周辺における多数の玉類の出土は、花の木古墳群が畿内を含む各地の有力な古墳と共通する葬送儀礼を受容していたことを示す。一方、花の木古墳群が中小の方墳や土器棺墓等の古墳以外の墳墓で構成されることは、古墳群が地方の集団の伝統に根ざしていた部分が大きかったとも考えられる。つまり、古墳文化が地方の伝統を温存しながら各地に浸透していった状況が読み取れることも重要である。 | |
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