野添遺跡の発掘調査で、検出された遺構は、総数312となった。これらの遺構は、土坑(SK)283、溝(SD)
7 、竪穴建物跡(SI) 9 、掘立柱建物跡(SB) 1 、柵列(SA) 4 、遺物集中箇所(SU) 1 、不明または、
不定形遺構(SX) 6 などであった。この中で最も多いのは土坑で、検出総数の9 割を占める。これらの遺構は、
その検出総数、検出密度に対して、遺物を伴うものが限定的であった。また、調査地点の大部分が、基本層序の
説明でも述べたように、自然堆積土層まで削平を受けていた。遺物包含層と判断できるものは、旧地形における
微凹地や削平面より低い部分のみであった。今回の調査地点全体で確認できた時期を概観すると、古墳時代後期
~平安時代初期、中世に大別できそうである。
遺構の時代別比較では古代が主体ではあるが、ほとんどの遺構は残存する基底部の検出である。特
に古代のものは、掘削深度の大きなもの以外、削平により滅失したものと思われる。調査区内では、
竪穴建物跡、掘立柱建物跡などが検出されているため、生活空間であった時期が想定できるが、集落
の規模、変遷を検討できるほどの成果は得られていない。