003:習書木簡

内容

遺物名:習書木簡(しゅうしょもっかん)

型式:

概要:木簡とは7〜10世紀を中心に、情報伝達用のメディアとして使用された木札です。この時代の木簡には、おもに文書木簡と付札(つけふだ)木簡がよく知られています。
今回出土した木簡は、全長は26.1cm。下端は折れて失われています。帰属時期については、奈良時代と考えています。

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場所

遺跡名:下懸遺跡

所在地:安城市小川町下懸地

調査区:2000A区

経緯度:北緯34°54′19″・東経137°05′42″

研究

類例:古代の木簡が三河地方の遺跡から出土したのは、これが初めてです。愛知県下では名古屋市志賀公園遺跡、春日井市勝川遺跡、海部郡甚目寺町大渕遺跡などで確認されています。

評価:記載された文字は、片面に『春春春秋秋尚尚書書律』、その裏面が『令令文文□□是(カ)是人』です。『春』を除くと、基本的には二文字ずつ、同じ文字の繰り返しとなります。これは習書木簡と分類されるもので、習字に使われたと考えられます。
書かれた文字のうち、『春秋(しゅんじゅう)』と『尚書(しょうしょ)=書経』は五経のうち二つです。いずれも四書五経として、儒教の最も重要な教典とされているものです。官人社会の教養として、律令体制に直接つながる人物でないと書けないものでしょう。遺跡周辺の歴史的性格を考える上で重要な情報となるでしょう。