001:袋状鉄斧

内容

遺物名:袋状鉄斧

型式:鍛造有肩袋状鉄斧

概要:木材の荒削(あらけずり)などに使う手斧(ちょうな)と考えられ、全長が8.3cm、刃幅が5.4cm、基部(きぶ)幅3.3cm、基部厚さ2.2cmを測り、袋部(ふくろぶ)と刃部(じんぶ)の境界部分で明瞭な肩を持つ。保存状況が大変良く、全体の形がわかる貴重な資料です。注目したいのはその形や作り方で、朝鮮半島で作られたものと考えられます。

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場所

遺跡名:朝日遺跡

所在地:愛知県西春日井郡春日町下之郷地内

調査区:2002Bd区

経緯度:北緯35°13′23″・東経136°51′15″

研究

類例:袋状鉄斧は弥生時代前期末には九州地方で出現し、古墳時代以降も存在する。その中で、弥生時代に所属する資料は北部九州地域を中心に分布し、本州では関東地域まで点在する(出土事例は全国で193遺跡395点)。
その多くは刃部と袋部が一体で製作された無肩袋状鉄斧(むけんふくろじょうてっぷ)であり、刃部と袋部を鍛接して別造りしたと想定される有肩袋状鉄斧(ゆうけんふくろじょうてっぷ)は事例が少ない。これまでに、その可能性があるものは4遺跡5点が確認されている。

評価:弥生時代後期初頭までさかのぼる袋状鉄斧は東海地方では初例であり、また朝鮮半島産と考えられる有肩袋状鉄斧としては、東日本最古の資料です。
また弥生時代後期になりますと、それまでの石器に変わって鉄器が普及し始めましたが、そのことを具体的に知ることができる大変貴重な資料です。
東海地域最大規模の環濠集(かんごうしゅうらく)である朝日遺跡に、東日本でいち早く、当時の最も優すぐれた技術で作られた鉄の道具が存在したことは、朝日遺跡が東海地域を始め東日本の弥生文化をリードしている、重要な遺跡であり、かつ中心的な集落であったことを示すものです。