下懸遺跡の木簡について

Date 2010/7/1 15:00:00 | Topic: 埋文

1 名 称:文書木簡

2 出土場所:下懸遺跡(安城市小川町)

3 大きさ・形状等
(1) 大きさ:長さ138mm×幅38mm×厚さ3mm
(2) 形 状:薄い板状
(3) 釈 文: [算カ] [賜カ]
・□□米物受被□□」

4 出土の経緯
下懸遺跡の調査において平成22年1月20日に出土しました。その後、日本福祉大学名誉教授 福岡 猛志 (ふくおか たけし)氏および名古屋大学准教授 古尾谷 知浩(ふるおや ともひろ)氏に釈読をお願いしました。また保存処理も行っております。

5 出土状況
(1)遺跡の概要
 遺跡は標高約7mの鹿乗(かのり)川左岸の沖積地上に展開します。遺構としては、弥生時代後期から鎌倉時代の集落の建物(竪穴建物・掘立柱建物)や水田遺構、川の跡が検出されています。また出土遺物は、弥生時代末から古墳時代初頭の土師器や木製品などが多数出土しています。
(2)出土状況
 木簡は平成21年度に調査した、09B区の川の跡より出土しています。川の跡は大きく上下2層に分かれ、下層は弥生時代から古墳時代、上層は奈良時代から平安時代の堆積がみられます。木簡は上層底部から出土しました。伴出した遺物は少ないですが、木簡の時期は奈良時代と判断されます。
 木簡は、途中で折り切られた状態でその下部のみが出土しています。

6 意 義
 木簡の記載内容は、米を含む物品の受け取りにかかわる文書になります。これまで愛知県内で出土した木簡のうち判読できた事例のほとんどが習書(しゅうしょ)木簡でしたが、実務的な内容の木簡としては初めての事例です。
 またこの出土地点は、以前に下懸遺跡で出土した習書木簡との出土位置も約20mと近いことから、木簡が集中するエリアとして認識されます。今回の木簡の出土により、付近に木簡を使用する古代の官衙(かんが)や豪族の居宅などの施設が存在していた可能性がさらに高まったといえます。




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